さしもしらじな

アイドル系のデトックス諸々

#アンジュルム短歌 全解説

 

 

A. まえがき

 

これが僕なりの、BIG LOVE!

 

 

B. アンジュルム短歌全解説

 

1. 和田彩花さん、朝顔

 

彩りは 夢より醒めて 鮮やかに

恋する十五は 人生の花

 

物は試しと作った歌。書き直す予定もあったけど、そんな余裕はなかった。

とにかく早く仕上げたて見せたい(10分以内)と言う一心でまず “彩花” を歌の最初と最後に配置。なぜと言われても困る。直感。

そこから “朝顔” なのだけれど、これは朝早くに咲くところから “夢より醒めて” という言葉を引き出しました。

で、“恋する十五” は「夢見る15歳」から。あざとすぎるか?でも「夢見た15年」にも通じるからどうしても入れたかったんすよね、“十五”。

“人生の花” もノリと勢い…そんなわけで “夢” “恋” “人生” と妙に素人っぽい薄っぺらな言葉を並べた短歌になってしまったのだけれど、まあ、オピニオンリーダーみたいなところもある和田さんのバランスを取るためにはこのくらい軽い方が良いのかもしれないと思っていたりする。

 

 

2. 福田花音さん、土筆

 

美しき 旋律にただ 立ち尽くし

女神薙ぐ音に わたし乱れて

 

“つくし” という響きから速攻で “美しき” と “立ち尽くし” を入れ込む。そこから 花音=カノン で “美しき旋律” を導き出す。実に単純。

“女神薙ぐ” は巫(かんなぎ)を無理やり入れようとした名残。まあ、そんなにこだわらなくでよかったのでは?と今でも思う。ここだけ重いし。

じゃ、なんで残したかっていうと、女神=ミューズの図式で METAMUSE を引き出したかったから。ただこれが『廃郷会華』の方で回収するとは思わなかった。ミラクルですね。

“わたし” はもちろん卒業シングルから。こう見ていくとガッチガチに固められた歌なんだけど…まあ、見た目通りか。でも妙な軽さがある和田さんの歌と並べると妙にバランスが良いのが面白いところ。

 

 

3. 前田憂佳さん、柘榴

 

王の灰 融化して履く 硝子にも

裂けるザクロは より赤くあれ

 

まあ、難解な歌。自分でも何を考えたかは定かではないという…そんなもん作るなよ。でも好きなんだよなぁ…こういうの。

まず、“王の灰” は Hi-King から。さらに “履く” “硝子” で ガラスの靴=シンデレラ…つまり「シンデレラ・コンプレックス」です。

とはいえもともと別要素、入れるのは無理…のつもりが “憂佳” と “融化”  で掛ければ一つに繋がるじゃん!と思いついたのが終わりの始まり。まとまるかよ、こんなもん。

で、プラスして “硝子” と “ザクロ” が一緒に読まれているのが短歌の描く風景として趣深いなぁと思ってこねくりにこねくり回したらこうなりました…うん。分かりづらい。

まあ、この歌の主人公は負け組なんすよね。だから硝子の靴が履けずに割っちゃって自分のカカトを切っちゃってそれがザクロより赤くあって欲しい…というのを纏めようとしてまとまらなかった。

ただ、まとまらなかったのだけれど、呪詛的な並びがなんとも好みで、『廃郷会華』にもそういう場面で出すことに…とはいえまさかあんなに活躍するとは。

こぼれ話。作った時は気づかなかったのだけれど、ツイートした時にフォロワーさんの反応から「言われれば寺山修司っぽい」ことに気づいたり。フォロワーさんの存在って大事。

 

 

4. 小川紗季さん、有加利

 

オハヨウ!と ガール大声 わたる風

去る踵には 起爆した町

 

難所その1。いかんせん、事前知識がほぼゼロ。なんなら、動画を漁っても情報が少なかったりする。困った。

そんななかまず名前がちょうど五文字だったので折句… “かきつばた” をしようと。頭の文字を全部繋げたら “オガワサキ” という仕掛け。

二つ目。これは本当に偶然なのだけれど、おはガールをしていたことがわかった瞬間に上の句に入れ込みました。ただ “わたる風” は間に合わせ。全てがうまく行くことはない。

さて、そこから “起爆した町” なのだけれど、これはユーカリの生態から。この植物、地下深くから水を吸い取ったと思ったら、葉っぱから発火するガスを空気中に散布するという生態がある。しかも、それで起きた山火事で燃え残った種からまた新しく発芽するという、何その生き残り方。ただのコアラの食べ物ちゃうんかい。

で、この “発火” から燃えるイメージを取り出して先ほどのルールと照らし合わせた結果出てきたのが “起爆する” という言葉。我ながら良い響きの言葉を選んだと思う。

そしてこれらを繋ぎ合わせて情景を思い浮かべて四行目の “去る踵にも” を導き出したと。ただこれ個人としては “きびす” って読みたいところなのだけれど、やっぱ他の人は “かかと” と読んでいるのかしら?ここは漢字の難しいところ。

ただ『廃郷会華』でまさか本当に町を爆発させるとは思わなかった…そもそも “町” にそういうイメージを持たせるとは、みたいなところもある。これが、歌物語の面白いところなんだろうな…!

 

 

5. 小数賀芙由香さん、吾亦紅

 

便りには 少し早めの「来年も…」

見据えて越すが 冬のくまさん

 

難所その2。ここさえ越えればなんとかなるだろうという打算はあった…が。が、本当に手がかりが何もない。ただ何もなくても作らねばならぬ。

まず一つ目は “こすがふゆ” を入れ込むこと。ここから “見据えて越すが 冬の” の下の句を整えた。しかし、問題は上の句。何を見据える?

で、ここで一つミスしてまして…サブメンバーとして入っていたシングルを「タチアガール」ではなく、「プリーズ ミニスカ ポストウーマン」だと思い込んでいたのです。なんというミス。なので、手紙をモチーフにしてしまっているという…なんたる失態。とはいえ今更どうしょうもない。

さて、手紙からさらに発展して “年賀状” にモチーフは深まっているのだけれど、それは “吾亦紅” に由来している。つまり「我も請う」。年賀状は貰ったら返さないといけないもの。そのイメージで上の句は練り上げた。

…で、最後の “冬のくまさん” は、作ってたときに冬眠する動物がクマとカエルとカマキリしか思い浮かばなかったからという理由。カエルは川名さんにとっておきたいし、カマキリは我が推し岸本ゆめのが “優しい先輩” としてラジオで挙げた人につけるわけにはいけない…という消去法から。まあ、上國料さんに使うために取っといては…?とも思ったけど、なんとなく「これも私の歌だから!」って勢いで言ってるのも面白そうだなぁと。

ちなみにここら辺の話は『廃郷会華』でも出てくる。なんというか、わかりにくい歌に関しては作中で結構補足的になりがちなんだよなぁ…。

手紙モチーフにしているので、返信ならぬ “返歌” が存在している。ま、どれかは結構わかりやすいと思う。しばしお待ちを。

 

 

6. 竹内朱莉さん、極楽鳥花

 

顎先に ふれこそばゆし ストレリチア

かおる汗あり たつ肌もあり

 

まず、“ストレリチア” という響きの良さね。とにかく使いたい!となって入れ込むことに。で、次に写真で見てみたら「顎先に触れたらこそばゆいだろうなぁ〜」と直感的に思ったんですよ。なのでもうそのまま読み込もうと。

で、ここまでは良かったんですよ。

下の句がねぇ…。

せっかくだから竹内さんの要素として “筆” って入れようと思ったんです。思ったんですけど…

うーん。これは官能的だなぁ…となりまして。

肉感的なのは良いけど、官能的なのはちょっと…。いや、その方向で作っても良いのだけれど、あくまでも “竹内朱莉アドベントカレンダー” の一環で、その本命で官能的なのは少し、ねぇ?

というわけで、マイルドに拵えました。まぁ、パフォーマンスの凄さをそのまま詠んだだけでもあるのだけれど、綺麗にまとまったかな?

ただ『廃郷会華』では元の発想が強く残る形に。前後でどんな歌が来るかで結構印象が変わるかも。

ちょっと与謝野晶子的作風。

 

 

7. 田村芽実さん、紅岩桐

 

電極の 南北を繋ぎ 夢先へ

照らす東西 声高らかに

 

まず、“めいめい” から “羊” を連想して、まあそこから『電気羊は夢を見るか?』という、いささか安直な発想。

それを念頭に置いた上で、紅岩桐を見るとランプっぽく見える…そこから初めに “フィラメント” という言葉が連想されたのだけれど、宮本佳林さんの「未来のフィラメント」がどうしても出てきてしまい田村さん要素が薄れるなぁと。で、別にランプから連想できる言葉はないかなぁ?で出てきたのが “電極” 。良い響きだなぁ。

そしてそのNSを繋ぐということで “南北” って書いたのだけれど、よくよく考えるとこの訳って合ってるのだろうか?勢いで詠んだけど。

とりあえずここまでの要素を組み合わせて上の句が完成。

そして下の句。まず、南北に対応して “東西” を入れたらオシャレかなぁと思って考えたのが、呼び込みの音頭としての「トーザイ!トーザイ!トーザイ!」ね。実はそっちの意味で読み込んでる、少しわかりにくいけど。

で、やっぱりミュージカルの印象が強いから、“声高らかに” で締める…と。

…ただ少し後悔ではないけれど、“夢先へ” ではなくて “夢舞台” でもよかったかなぁと思ってる。初めに紅岩桐を見たときに、“洞の中を行く夢先案内人” というイメージから “夢先へ” にしたのだけれど…どうだろう。

 

 

8. 勝田里奈さん、金蓮花

 

ひさかたの 閃きはネガ 掌で

織りなすポジティブ とっておきの魔法

 

とりあえず、“省エネ” というのを読み替えて、“シンプルだけど力強い歌” を作ろうと志向。じゃあ、擬似万葉調にしてみるかということで、方向性は決まり。

“擬似万葉調” …どうするかというと、五七五/七七の上下ではなく、五七/五七/七の作りにするということだ。そもそも “短歌” というからには “長歌” というものがあるはずである。それは、五七を繰り返していき、その最後に七を持ってくる形。つまり、五七/五七/五七/五七/…/五七/七…これが長歌であり、その最小単位をもともと短歌と呼んだ…らしい。というわけで、その原初の形に戻すのである。

そしてそのついでに枕詞を使おうというのが今回の遊び心。で、ダーッと見返して使いやすそうだったのが “光” や “白” を導く枕詞の “ひさかたの” だったわけである。有名なのだと「ひさかたの 光のとげき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」がある。ただこれをそのまま光や白に繋げても面白くない…と思ってからが長かった。

そこで思い出したのが服飾の仕事である。そこには必ずカタログがあり、モデルがいて写真を撮らなければならない…で、ここで閃いた。いや、なんかダジャレっぽくなってしまったが “閃き” と “ネガ” である。この “閃き” にひさかたのに繋がる光の意味と、アイデアの二つの意味を持たせることを発見したのだ。さらに、“ネガ” も写真そのものと、“まだアイデア段階で現実には存在してない理想のかたち” という意味を重ね合わせた。

更にそれと対をなす形で導き出したのが “織りなす” と “ポジティブ” である。特に “織りなす” は服飾にも掛かっているのが実に良い。もちろん、ポジティブはネガに対する “実物” という意味はもちろん、気分の方も掛かっている。

で、結句。ここは下手に難しがらずに「とっておきのオシャレをして」から。本当は “一枚” にして服と写真両方を掛けても良かったのだけれど、ピンと来なかったので、少々素人くさくははなるが “魔法” で収めることに。結果、対句が綺麗な、非常にシンプルな歌になったなぁと満足してる。

 

 

9. 中西香菜さん、空木

 

心尽くし 悔しさに涙 溢れても

きみは空への 羽根を掴んだ

 

意外と作りやすかった記憶がある。というのも、“アンジュルム” の命名者であるということ、“空木” から連想できる言葉がかなり多かったことが要因だと思う。

とはいえ、こういう時は反対にモチーフの選定が難しくなる。そこでもう一つ思い出したのは You plus である。この “プラス” を “足す” とか “満たす” とか言い換えて言って “溢れる” という言葉に辿り着いた。

また、もう一つ、空っぽの容器に何かが満ちていって結果的に “溢れる” という動きに持っていきたくなったのだけど、そこで出てきたのが “心尽くして” である。頑張ってやったけど空っぽになってしまった、そこに “悔しさ” が溜まっていって涙が溢れてくる…綺麗な流れ。

ただ、個人的には J-pop 感あって、作風的にはくさすぎるとは思ってたりする。まあでも、作っていくなかで普段自分が作らないようなものが出てくるというのも面白い現象である。たまにはこういうのも良い。

因みに『廃郷会華』において二人称に “きみ” が使われているのはこの短歌のせいだったりする。思わぬところで思わぬ制限が生まれるなぁ。

 

 

10. 室田瑞希さん、紫丁香

 

答えざる 沈黙は死と 言い撃鉄を

引き香る火煙 東雲と消え

 

これは作るのはめちゃくちゃ早かった。

まず、花名の “はしどい” …この並び、使いたくなるじゃないですか? “はしどい” ですよ?滅多に見ない読みじゃないですか?というわけで、“はしどい” を入れ込むという体から、“は死と言い” が決まりました。

そのあと “紫” “丁” “香” からそれぞれ連想する言葉を出していくんです。まず、“紫” から “東雲” 。これは自分のフェチ。次に “丁” で始めに “豆腐” が出てきたんですけど、これは使いにくい…。で、次が “拳銃” …これは東雲と相性が良さそうだなぁと思って情景を連想したら今の歌の形がほぼほぼ完成しました。“香” もそのまま “香” で使ったし、火煙から東雲にモチーフ同士が綺麗に繋がるし、今まで作ったことないハードボイルド路線だし…良い!

で、最後の最後に “拳銃” から “撃鉄” に変えたのかな。カッコいいじゃない? “撃鉄” って響き。好きなんすよ、“撃鉄” 。3人組パンクバンドを組んだら是非とも名付けたい “撃鉄” 。

因みに、改めて作った歌を整理したときに初めて “言い撃鉄を” が七文字ということに気づいたんですよ。で、そこで「え?これ実質、塚田邦雄じゃん!句跨ぎじゃん!すご!」みたいな。いやぁ、無意識で好きなものに作風が似てしまうんだろうなぁ…。

『廃郷会華』ではホントにラストで出しましたね。うん。これでまとまるな、と。そういう意味でもありがたい歌。

 

 

11. 相川茉穂さん、春蘭

 

枕元 伏せる獣の 寝息にも

くしゃみがまじり むずかゆき鼻

 

思いのほか苦戦した記憶。

バレエだったり、怪獣好きだったりですんなり行くかと思ったら、いかない。春蘭というわりかしメジャーな花なのですんなり行くかと思ったら、いかない。

なんでぇ?

で、ドツボにハマったのですが、そこから考えに考え抜いたところで、怪獣と春蘭の共通点…正確にいうと “日本産の” 怪獣と “日本産の” 蘭の共通点に “一体の堂々たる存在感” っていう共通点を発見して、そこから春との連想で、“河川敷で寝てる怪獣が花粉症でくしゃみをしていて、それに釣られて私もくしゃみをしてしまう” というストーリーが浮かんだんですよ。

ただ、浮かんだところまでは良いんですよ。

“怪獣” の上手い言い換えが無い。

で、“怪獣” を上手いこと入れ込むことも出来ない。なんかダサくなる。

で、諦めて “獣” でまとめたのですが、そしたらサイズ感が小さくなっちゃって、河川敷で寝ててもただの野生の動物じゃんってなって、前に考えていた情景が上手いことまとまらないなってことで今の形に落ち着かせました。

経緯的にはもうちょっと出来なかったかと思いつつ、実は結構お気に入り。

 

 

12. 佐々木莉佳子さん、瑠璃虎尾

 

トリックを 見破りたいが 見透かされ

魅せられて踏む 囚われの恋

 

大苦戦。佐々木莉佳子さんなんて短歌にするもんじゃない。

初めは余裕綽々だったんですよ。だって瑠璃虎尾ですよ?なんか字面からどうにでもなりそうじゃないですか?

どうにもならんかった。

で、もうそれはそれはもう1時間くらいあーでもないこーでもないと考えていたんですよ。で、初めに思いついたのが、“虎” をとにかく入れ込んでみようと。で、初めに “トラップを 見破りたいが” って叩きあげたんです。つまり、“トラ” と “タイガー” ね。で、このとき細かい韻を踏んでいくのってありだなって思ったんですよ。虎を一旦忘れて、とにかく踏む。で、“見破りたいが” “見透かされ” “魅せられて” の “み” の頭韻を細かく踏むという発想に至るわけです。お、突破できそう。

ここで今一度、原点の “虎” に戻るんです。確かこの段階で一句目が “トリック” に変わっていたので、一番最後に “囚われ” で “虎” を回収。そして “踏む” は  “虎の尾を踏む” から。これでようやくまとまった。いや、ほんとよくまとまったなぁ…。

因みに、“恋” は正直なんとなくでつけました。あんまり難しいこと考えてもなぁ…と。ただ “恋” にしたことで元々は “マジックショー” のつもりで書いたものが、“一目惚れ” の歌になったのは幸いだった。『廃郷会華』でもそう使われることとなる。

 

 

13. 上國料萌衣さん、梅

 

装いに 漬けて干しては 染め上げる

酸いも甘いも 世界こそ私

 

これはびっくりするくらい早かった。“梅” からすぐ “梅干し” を連想して、さらに上國料さんといえばモデルなので、そこから “服” を連想して、“染め上げる” イメージが出来上がったんです。さらに、“酸いも甘いも” とダメ推しでつけてみたりする…意外と良い。

結句は初め違う言葉が入っていたのですが、“世界こそ私” って言葉が降りてきた瞬間に、「わぁ〜、ナルシス萌衣だなぁ!」と思って即採用。完成。呆気ないけど、なかなか好き。

ただ面白かったのは『廃郷会華』。一通り物語の内容を考えたあと、頭の中であらすじをさらっていたときに女がこの歌を歌い出して(笑)マジでビビった。勝手に話し出すとか、勝手に動き出すとかは聞いたことあるのだけれど、まさか短歌を勝手に詠みだすとは思わなかった。めちゃくちゃ変な経験であり、貴重な経験。ちょっと怖くもある。(ただそこから、女も呼んでいいんだ!となって随分と歌が使いやすくなったという話もある。

 

 

14. 笠原桃奈さん、芒

 

巻き上がる 嵐を躱し ユートピア

太もも撫で上げ いま走り出せ

 

これもわりかし早かった歌。

元々は前半部分だけで成り立たせようとしてたんです。芒が嵐に靡いている姿の曲線美だけ読むのって、なんか笠原さんぽいなぁって。そのシンプルさが良いかなぁと。そしてその曲線美を表すために “巻き上がる 嵐を躱す” って物理的に強い表現なのもポイントが高い。

ただ、それだけだとやっぱり文字が埋まらないと。

で、“ユートピア” …つまり “桃源郷” 、そこを目指そうと。あとはなんとなく車とかじゃなくてその身一つで走っていきそうだから、“太もも撫で上げ” …ここに “ももな” が読み込まれているのだけれど…走りだす、と。もともとは “走りだす今” だったのだけれど、カッコつきすぎかな、と思って現行の形に戻しました。

…にしても、この “ユートピア” が『廃郷会華』のキーワードになるとはつゆとも思わなかったなぁ…。

 

 

15. 船木結さん、菖蒲

 

乗る波に からだ掬われ まっ逆さま

ただ青は青 地球は丸い

 

これ、元々は “ショウブ” って読んでたんです。で、どんな植物だっけ?と思い改めて調べたら “アヤメ” とも読むと。これがなんかカントリー・ガールズとアンジュルムを兼任してたことに重なるなぁと思い、その “一つのモチーフに異なる二つが重なってる様子” みたいなものを描けたら良いなぁと。

また、それとは別に港のイメージ…これは “船木” からなのだけれど…港で船を結んでいるロープをモチーフとして使えたらなぁと思い調べたのだけれど、これが使いにくい言葉で。係留、なんて言葉も素敵だったのだけれど、うーん…いまいち使いにくいなぁと。そこで思い出したのがサーフボード。確か、サーフボードを無くさないために繋ぐためのロープを足に付けるのだけれど、それを係留のイメージから発展させて思い出したんです。あと、サーフィンやってそうじゃないですか?こりゃあ良い!と思ってサーフィンしてもらったら何故か波に飲まれてすっ転んでました。

で、要はその落ちる瞬間に見る景色…まっ逆さまになりながら水平線を境に空と海が反対になる…あぁどちらも青だなぁ…そして地球って丸いんだなぁ…みたいなちょっとした真理を体感するのがなんか船木さんぽい。

で、結末は描かれてないけどそのまま海にダイブする…これが起承転結の “結” 。まぁ、これは気づかないところか。

因みに “青” だったり、“丸” だったり、どこか竹内さんの影を感じるなぁとは少し思ってたりもした。

で、『廃郷会華』では一番使うところに困った歌。困難の波に襲われるみたいな使い方をしたのだけれど…うーん。ま、一つくらいはこうなるかなという感じ。全ては上手くいかんぜよ。

 

 

15. 川村文乃さん、睡蓮

 

裁き待つ 時こそ惜しめ 釣られゆく

糸すがる人の 先の蓮池

 

これは個人の趣味で “睡蓮” と来たら芥川龍之介の『蜘蛛の糸』なんですよ。だからほぼそのまま世界観を援用。

ただ元々は “地獄の底で蜘蛛の糸にすがる人をバカだなぁと思い見下している人” の歌にしようと思ってたのです。ですが、これは川村文乃さんではないなと思って、少しのチャンスがあれば果敢に挑戦するという現行の歌になりました。

一応、世界観を援用しているものの “裁き” や “釣られ” などキーワードが散りばめられているのがスパイス。個人的には “糸すがる人” の韻の踏み方も好き。

ただこの歌にでてくる “人” が『廃郷会華』で “アンドロイド” のことを指し示すことになるとは、この時の僕は思いもしなかっただろうなぁ…。

 

 

17. 太田遥香さん、黄花玉簾

 

カーテンの 裾に見つける おむすびの

はぐれた米粒 5年目の朝

 

実は今回のアンジュルム短歌の中で1番のお気に入り。というより、「え、こんなの書けたの?自分!」という感じ。俵万智風味というか、日常系?

確か、“簾” からカーテンが出てきて、そこからその裾に米粒がついてたら面白いな…で一気に完成させたはず。たぶん、この日が冴えてたんだと思います。次の歌もほとんど何も考えずできているんで。

因みに “5年目” には特に意味はありません。『廃郷会華』の時も特に意味を持たせてないし、ただ文字数を合わせるためだけにしているので。ただ数字があると意味が深くなるので人によっては大事な意味が出てくるかもしれない。

あ、そうそう。初めに書いたイメージは一緒に住んでる夫が夜作ったおむすびを朝出かける妻が見つけるというストーリーだったんだ。それが、一人暮らしの、今日の準備をしていた昨日の自分がカーテンに米粒をつけてた…というストーリーに変わったのも結構、面白い現象だったな。皆さんはどっち派?

 

 

18. 伊勢鈴蘭さん、雪柳

 

惚れるまま 凍てつく坂を 直滑降

吹雪に塗れて 永久凍土へ

 

太田遥香さんの歌もそうだったように、本当に一瞬で出来た歌。

確か “雪柳” から “吹雪” を連想したんです。で、そこから雪女に出会って、すぐ惚れて、凍って、落ちていく…みたいなイメージが出てきてそのまま書いてしまった。

工夫…とまでは言わないけれど、“直滑降” と “永久凍土” の二つの熟語を入れこんでるのが短歌としては珍しい形かもしれない。というより、そもそも熟語を入れること自体めずらしいか。

佐々木莉佳子さんの歌もそうだけど、こういう推しに落ちる瞬間を描いていきたいものなのだけれど、初期メンバーは現役時代を知らないから難しいってのが大きいんですよ。迂闊に書けないというか。そんななかでこういうのが偶発的に産まれるとちょっとガッツポーズ出ますね。

 

 

19. 橋迫鈴さん、女郎花

 

御々名得し この身に掛かる 威圧ごと

血潮滾らせ 回すダイナモ

 

“女郎花” から “御々名得し” のダジャレから始まっているのだけれど、そもそも “御々名” って単語あるのか?って今は思ってたり。ま、書いたもんは仕方ない。

無論、この “御々名” はスマイレージであり、アンジュルムを想定している。なので初めの段階だとこの後に “涙も怒りも 笑顔をも” と続けていたのだけれど、流石に推し贔屓すぎるので却下。あと、意外とこの後が続かない。なので、“名前を得たことで自分の身に掛かるプレッシャーを自力で跳ね除けていく” というテーマで書くことに。意外と “プレッシャー” を “威圧” と訳したのが発明だったり。

“血潮滾らせ” はメンバーカラーのピュアレッド…初代リーダーの赤、そして二代目リーダーの元の色としての赤、そして赤リップ…そんな “赤” を滾らせるというのがもう一つのポイント。そして、ダイナモを回す…のだけれど、ここ少しミスってて。たぶん、“ダイナモ” は “発く(ひらく)” が正しい…というかしっくり来るんですよ。でも詠みづらいから “回す” にしたんですけど、この場合正しいのは “タービン” なのではないかと。だから、“発けダイナモ!” か “回せタービン!” が良かったのではないかと少し思ってる。まあ、でもここら辺もご愛嬌ということで。

因みにこれをハロQメンバーに見せた時「厨二病感ある!」と言われたのだけれど、個人的なイメージは斎藤茂吉の戦時下の国威発揚歌をイメージしてたりする。まぁなんとなくだし、その場合横文字は使えないのだけれどね。あくまでイメージ。

 

 

20. 川名凜さん、雪の下

 

貸したはずの ノートにつっ伏す 横顔に

ホクロを探す 昏き放課後

 

実はどう作ったかあんまり覚えていない歌。気づかないうちにこうなってた。

おそらく、カエル = 帰る で “放課後” というのが初めに決まった気がする。で、初めは図書室の風景にしようとしたのだけれど、なんとなく窓から砂まじりの風が吹いていて欲しいな、というので教室に変更。そこで読みかけの本につっ伏すイメージが浮かんだんですよ。で、それを発見する…のだけれど、ここから何故か “つっ伏す横顔にホクロを探す” という状況にハマるんですよ。なんか変態ちっくで良いなぁと。軽犯罪未満の変態。

そこからは文字数合わせにめちゃくちゃ時間かかった記憶。意外に合わなくて苦戦したなぁ…。どうしても “昏き放課後” を入れ込みたくて、あーでもないこーでもないと苦戦したもの。結果、綺麗に読み込めて大満足。

にしても、借りたノートにつっ伏してるのを実際に見たらドン引くかもしれないな…。でも、そこで直接起こすのではなくて、横顔にホクロを探すのが、なんか現代詩っぽくて好き。そうそう “雪の下” という言葉の響きが “自分の隠している心” みたいな響きがあるから、こういう感じもありかな、と思ってたっけ。そしてどことなくコンテンポラリーな感性で、そこも川名さんぽいなとも思ってる。

 

 

21. 為永幸音さん、紫羅欄花

 

パソコンも 叩けば直ると

BANG!BANG!BANG!

ポリプロピレン パオンパオン

 

間違いなく一番の問題作。そして出来たあと1時間くらい笑ってた。これ、良いのか?ま、いっか!

そもそもの始点は “美人なのに大暴れ” だったんですよ。で、いろいろ考えたのだけれど行き着いたのが “インド映画” というテーマ。『RRR』みたいな。でもこれを短歌にするのはムリだよなぁ…と思って “インド” にテーマを変更。そこから、“カレー” とか “シヴァ神” とかもろもろ考えた末に “象” に辿り着くんです。

そこでむかしラジオ聴いてた時に “ぴえん 超えて ぱおん 超えて しおんぬ!” という投稿があったのを思い出したんです。そこから、“ポリプロピレン ぱおんぱおん” という言葉の並び?を思いついていたんです。

それが “象” で繋がって!よく見たら文字数も七六だから、一文字加えれば七七になる…じゃ、“ぬ” つけちゃお!「泳げないマーメイドぬ!」(ま、言ってたのは橋迫鈴ですが)

…で、この大暴れ感良いな!…何に起因するんだろうと考えたら…“パ” 行ではないかと。じゃ、パ行を上の句で使おう…そして意味がありそうな並び…で “パソコンも 叩けば直ると パン!パン!パン!” が出てきたんです。なんか、言ってそうだし、やってそうだし、為永幸音。(大いなる偏見)

その後、別に “バン!” でもそんなに変わらなくない?と思い現在の形に。“BANG!” 表記はもちろんSMAPの「BANG!BANG!バカンス!」…からではない。ただこの曲のトンチキ具合は為永さんぽい。

…という元の歌からは考えられない量のバックボーンがある歌。だからこそ『廃郷会華』では入れるのに苦労した…たぶん出来た経緯を1からでっちあげたのはこの歌だけだったはず。

 

 

22. 松本わかなさん、桔梗

 

大海を 飲み干し今日より 高くあれ

ある種を誦んじ より深くあれ

 

松本さん、個人的には “勇壮” というイメージが強いんです。そこにプラスして、川名さんの “コンテンポラリーな感性”、為永さんの アヴァンギャルドな身体性” とのバランスを見たときに、“スタンダードな知性” をイメージとして志向。そこで思いついたのが “漢詩” 。気宇壮大の感覚が出れば松本わかなという大器に見合うのではないかと。

ただそういう “気宇壮大” さなんてそんな簡単に浮かばんだろう…と思っていたのだけれど、“大海” という言葉が出てきたときに行けそう!となりまして、いつの間にか飲み干してた(笑)

なぜ “高さ” かと言うと、「井の中の蛙、大海を知らず、しかしその高さを知る」から。いや、飲み干せば “高さ” もわかるやん、という一つの逆説。

そして飲み干したあとの地に多様な生物が横たわっている…これは『池の水を全部抜く』ですね。そしてより知的に “深く” あろうとする…この知的なイメージも汲み取ったのが大きいかな。

因みに “今日より” は誕生花の “桔梗” から。正直なんでも入るのだけれど、せっかくだからの洒落である。

 

 

23. 平山遊季さん、菫

 

熱をもて 煌めき自在に 飴細工

焦がれる目には ビターな純情

 

これは完全にパフォーマンスからのイメージ。スイートとビターのバランスが平山さんの妙だなって思ったときに出てきたのが “飴細工” 。そこからはテキパキと手早く組み立てた覚えがある。

“ビターな純情” と言うキャッチフレーズがかなり良い感じ。一方で、“自在” と “飴細工” の地味な韻はかなりあとで踏んでることに気づいていたりする。

『廃郷会華』ではかなり扱いに困った…というかポップだからこそどうでも使えるって言うので困ったんですよ。で、初めはリプライスにさせていたのだけれど、少し毒っ気が足りないと言うので一箇所出番を削ったんですよね…この話はまたあとで。

 

 

24. 竹内朱莉さん、誕生日

(1997/11/23)

 

ひとひらの 涙が雪と 結ぶ夜

ガムを噛みつつ 走る一号線

 

メンバーシリーズを終えて、竹内朱莉さんの歴史を辿る短歌シリーズ。どちらかと言うと自分色強め。これもそう。

まず、日にちから二十四節気の “小雪” 、そして “勤労感謝の日” というテーマが出てきたんです。そこで “トラックの運転手が眠気を噛み殺しつつ雪のなか急いでどこかに向かう” というイメージが出てきたんです。それをそのまま歌にしたらこんな感じになった。

“涙” はもちろん、“雪” も “天使” のイメージとして使っていて二つで “アンジュルム” だったりする…個人的には。“ガムを噛みつつ” はどうしても使いたかったフレーズ。“一号線” は国道一号線のこと…なのだけれど、僕は西日本出身だったりするので、どういうイメージかはたぶん幅があるとは思う。

『廃郷会華』で “行かなくちゃ” な歌になったのはただの偶然。ただ、うまいこと転がり込んできたとは思った。

 

 

25. ハロプロエッグ加入(お披露目)

(2008/06/22)

 

天啓く 太陽高く あればこそ

影より長く 集う人あり

 

ちょうど夏至の日なんですよね、ハロプロエッグの加入日。

太陽が一番高く上がる日…ということはその影は一番長くなる日…その影に涼を求めて人々が集まってくる…太陽=アイドルと捉えて、高みを目指せば目指すほど人が集まるという意味を持たせれば良いなという歌。ただ意外と五七五七七にまとめるのに苦労した記憶がある。

結局 “影より長く” の意味が捉えにくいかもなぁと思いつつ、ゴリ押しで行きました。( “影はより長く” の方が伝わりやすかったかも。)

“天啓く” は “天地開闢” …だから正確には “闢く” が正しいのだけれど、これは好みで。本当は “天啓き” の方が文字の連なりは気持ちいいのだけれど、意味的にはこちらが正しいので現行…と、細部の出来に甘さがある、短歌を作る難しさを痛感してる歌だったりもする。プロの方との境目かしらね。

 

 

26. スマイレージサブメンバー加入

(2011/08/14)

 

いすを寄せ ページをめくる 指にふれ

かえす笑顔に 揺れる風鈴

 

川名凜さんの続編とも捉えることが出来る歌…なのだけれど、それは結果的にそうなっただけ。

一つ目はお盆の季節であること…で、この年は東日本大震災があった年なので “津波” を隠しテーマとして持ってたりする。どこにあるかというと “寄せる” と “かえす” 。これを必ず入れようと。

ただ、“寄せる” を入れ込むのが本当に大変だった。僕の語彙にない…ヤバい…と思って出てきたのが “席を寄せる” 。お、これなら学校を舞台にできる!と思ったのだけれど、ちょうど夏休みじゃん!で “いすを寄せ” に落ち着くことに。ここで川名さんの続編を意識し始めて “ページをめくる” を入れ込み、後はそのままつらつらと…とはいかず。

“揺れる風鈴” のところ、本当は “コップの中の氷が溶けて鳴る音” を入れたかったんですよ。でもうまいこと省略できない…で、仕方なく別の聴覚情報にすることに。

『廃郷会華』ではまんまなシーンとして使いました。因みに “かえす笑顔” でスマイレージと掛かってるんでしょ?とお思いでしょうが、実は後から気づいていたりします。そんなことばっかり。

 

 

27. メジャーデビュー日

(2011/12/28)

 

断たぬ歯は 豆腐にもろく カマキリの

卵に刃を立つ 祖父がまほろ

 

さて、遡ること5の小数賀芙由香さんのところで “年賀状” をテーマにしていて、その返歌があると書いていたのだけれど、これがその歌。まあ、正確には返してはないのだけれど意識はしている。

一つ目は “カマキリの卵” 。これは5で出てきた冬眠する動物の一つとして出てきたものからの再利用。ほんとのところ、歌のテーマとして使いたかったのだ。

二つ目は “たつ” 。これはサブメンバー加入シングルの「タチアガール」から。そもそもサブメンバー加入とそれに伴うシングル、そして正式なメンバーへ昇格とメジャーデビューの四つの出来事全部を取り上げるのは少しやりすぎというのもあって二つに絞った経緯があったのだけれど、そう言った事情を補填するために入れ込んだ経緯がある。

さて、その結果としてもう一つの韻として “は” が出てきたのだけれど、最終的に “まほろば” で回収されたのが面白いところ。プラスして『廃郷会華』ではユートピアが出てくるのだけれど、そこまで関わってくるとは思わなかった。

“祖父が夢を持って作り上げたユートピアは脆くも崩れ、当の本人は絶望をぶつけるものを探してより弱きものにあたってる”…そんな意味を込めたのだけれど、なんとも僕らしいくらい歌でかなり気に入ってる。こんな歌ばっか作って暮らして行けたら良いのに。

 

 

28. スマイレージ初武道館

(2014/07/15)

 

不意のおばけが 怖くなくなったのは

背を越すものも 多くなったから

 

一つくらいは “自由律” の歌を入れたかったんです。ただ思い返すと “自由律短歌” って聴いたことないな、とは思うのですが。

これ、あんまりできた経緯をちゃんと覚えてなくて、とにかく大きく成長したことがわかればな、で “おばけが怖くなくなった” を思いついて、その理由として “背を越すものも多くなった” ということを思いついたってだけなんですよ。そしたらたまたま言葉のリズムが悪くなかったのでそのまま使った次第。正確にいうと前半はバランスが少し悪かったので “不意に” をつけたくらい?

『廃郷会華』では使いにくかった覚えがある。

 

 

29. アンジュルム改名

(2014/12/17)

 

耐えうるか 引くエンジンは なお熱く

奮える声に 愛しみを聴け

 

たぶん一番作るのに苦労してる。というのも、テーマが定まりきらなかったから。一応、名前が変わるところから “易姓革命” とかも候補にあったのだけれど、上手いこと思いつかなかったんだよなぁ。

というわけで日にちでなんかないかなぁ…と探してこれなら何とかなるか?となったのがライト兄弟の初フライト。

このテーマで行くって決めた後は “エンジン” のイメージから一気に作り上げた覚え… “エンジン” を “引く” と言うのがポイントかな。そこから “奮える” …本当は “震える” だけど、ここは好み。

“愛しみ” は、アンジュルム改名だから使っても良いかと思えた単語。“BIG LOVE” であり、“涙” にも通じる…のかなぁ。新しく拵えた飛行機でどこまで飛べるか…そういう不安と期待を込めて。

 

 

30. 初の海外公演、パリ

(2019/06/04)

 

洗練は 飽かずに探す 翅脈にも

飛んで帰り着く 秋津島にも

 

こだわりの逸品。

まず、パリ公演を選んだところから。これは竹内さんが将来どうするか?という質問に対して海外で勝負したいこと、そしてそう意識し始めたのがパリ公演から、という発言を踏まえて絶対にこの日を入れたかったというのがある。

そして日にち。語呂合わせで “虫の日” なのだけれど、この “パリ” と “虫” のイメージを掛け合わせた時に出てきたのが “アール・ヌーヴォー” のイメージ、そして “トンボ” というテーマ。

さて、“トンボ” を試しに調べてみると日本の形を “トンボ” に見立てて、その名前を “秋津島” と言うことがわかるんです。ここでパリと日本が繋がり、“芸術の都パリから帰る飛行機でふと見下ろすと日本が “トンボ” の形が見える” という着想を得た。

実際のアウトプットとしては、アール・ヌーヴォーを “翅脈” 、“秋津島” はまんま使う。で、わかりにくいけれど “洗練” は “蜻蛉目” と軽く韻を踏むようにして、さらに “飛んで” のところも “トンボ” を意識する様に作ってあったりする。

まあ、気づく人がいるか分からないのだけれど、引っかかる人は引っかかるらしい。作り甲斐のあった歌。

なお、『廃郷会華』では使い難いことこの上なく、結果として王様に帰って来てもらうことになった。こうやって設定が増えていくんだ…

 

 

31. アンジュルムリーダー就任

(2019/06/19)

 

王子待つ 暇はないので 襟ただし

瑞々しき桃 齧り征く夏

 

夏至あたりに色々なイベントが重なりがちな竹内朱莉さん、そんなに器用に色々書かれませんて。

さて、そんなこの日は桜桃忌…太宰治が産まれて死んだ日である。ネタ切れも甚だしい。ただ太宰治は中高生の時に結構読んでた作家である。なんかないかお考え出て来たのが『女生徒』。“王子待つ” はそこから来ている…のだけれど読んだのが前すぎて実際は定かではない。

ただそこからはリーダー就任ということで “襟ただし” を入れるとなんとなく形としてはハマった予感。ダメ押しに桃というキーワードを入れる…地味なこだわりは “瑞々しき” 。和田彩花さんはハロプロリーダーでもあったのだけれどそこを継いだのかハロプロエッグの同期である譜久村聖さんである。この “ミズキ” をさらっと入れ込めたことで手応えは確信へと変わった。

“齧り征く” は少し雄々しいか。“行く夏” だと夏が過ぎ去って行くイメージになるので、“征く” にしたのがちょっとしたポイント。

初めこそ息切れ感あったものの、終わってみればまとまりの良い歌になってホッとした記憶。『廃郷会華』でも上手いこと植ってると思う。

 

 

32. コロナ禍

(2021/03/29)

 

月光の さやけき空に 狼は

ただ咽び泣く それもまぼろし

 

ここも東日本大震災と共に避けてはならないと思い入れました。

はじめのモチーフは “マスク”。そこから “仮面” に変わっていて “月光仮面” が出て来て “月光” まで、意外と早く辿り着いた。いや、ぼく自身は『月光仮面』はきちんと知らないのだけれど。

“月光” のポイントはもちろん花鳥風月の “チーム月” 。一応、鬼束ちひろさんの「月光」も The Ballad でも取り上げられていたのだけれど、それを竹内朱莉さんが歌っていたかはぼくは覚えてない…というか、船木さんの印象が強いんです、「月光」。

後は思いのままにつらつらと…深く書かないことを心がけていたりする。あくまでも “フィクション” だと書いて行くと遠くから狼の鳴き声が聞こえてくる。もちろんニホンオオカミは絶滅していてその声が聞こえることはない。つまり、まぼろし。コロナ禍が明けた今となってはあの頃は不確かな過去の様に思える…そんな想いを込めた。

『廃郷会華』は 24 で始まり、この歌で終わることを決めたとき、すべての流れが繋がると確信していたりする…というか、その二つを始めと終わりに置いた時 「廃郷回花」という言葉が頭に降って来てこれで行くことに決めたのだ。そういう意味ではとても重要な歌。

 

 

33. 「愛すべきべきHuman Life」発売

(2022/05/11)

 

ふりかえす 手のぬくもりを 握りしめ

「ぼくは変わった。」もう忘れるな

 

まず、日にちの話。結果として竹内アンジュルム期の一番長い体制となった平山遊季加入後のアンジュルムなのだけれど、加入日に焦点を当てると12月への偏りがひどくなるのでこれを避けたかったのが一つ。で、もう一つあったのが堂島孝平さんの合流。竹内さんのラストソロ曲を書いてるのでそこを何とか絡めたい…となった時にこのシングルの発売日なんてどうだろう?と考え設定した。

で、ものはついでとして擬似本歌取りを試みてみたりしている。どこかと言うと “ふりかえす手” 、そして “ぬくもりを” “忘れるな” …まあ、気づくかどうか微妙だけれど、ここの歌詞が好きなので軽い引用を。

ここを読み解いてもらうと場所がテーマパークだってことがわかったりする。それだけでも世界観は広がると言うものだ。

因みに “ぼく” は等身大の僕に近かったりする。ま、ここまで明確な経験ではないのだけれど、最近なんか変われてるなぁ…と言う実感のもとに書かれた歌だ。

さて『廃郷会華』ではこころをアンドロイドに移されたあとに歌われるのだけれど、一人称が変更しているのはこの歌のせいである。なんの気なし…と言うわけでも無いのだけれど、一人称を “わたし” で始めた結果、この歌にぶつかったときに一人称どうする?問題が出て来た…なんと言う初歩的ミス…なのだけれど、開き直って “そう言うことにした” 。つまり、実はアンドロイド前後で性別が変わってる。

こうやって設定が増えていくんだ…。

 

 

34. 『煌々舞踊』初日

(2023/04/15)

 

龍に鈴 つければ雨が いつ降るか

わかると笑う 傘に雨音

 

#アンジュルム短歌 で作った最後の歌。

『煌々舞踊』にはもちろん僕も行って来たのだけれど、SNSで反響が大きいなって思っていたのが “龍” の文字。少し話は逸れるけど、ファン発信の竹内朱莉さんの卒業コンサートの題案で一つ印象的だったものに “画竜点睛” ってのがあって、それの印象も強かったのだけれど、それらを総合して “龍” の字を入れたかったんです。

で、“鈴” 。これは橋迫鈴です。どこかで第二章は竹内朱莉さんと橋迫鈴さんの二人の物語だなぁと思っていて、二つを合わせて一つの歌を作る…というのはどうかなぁと。準備期間に呼んでいたしね。

あとはつらつらと書けたイメージ。正直、安産すぎて面白くない、けどそれが良い。ある意味、短歌を書き続けたからこそすんなりできた歌だな。

 

 

C. #アンジュルム短歌

 

毎日小出しにして来ました。

順番は、年月日の “アメリカ方式” 順。ただこれにしたのは他の並びだと “面白くないから” という理由。つまり “アメリカ” だから採用したというのは偶然。

もう一つあるのはこの順番を採用した上で和田彩花さんの誕生日から始めると、平山遊季さんの誕生日で終わるというところ。結果としてあとから下井谷幸穂さんと後藤花さんが入るので竹内朱莉さんが所属していた時代の最初と最後のメンバーというわけではなくなったのだけれど、偶然にしては面白いなぁと。ここら辺のマジックよ、ほんとに。

 

 

36. 下井谷幸穂、後藤花加入。

 

笹ゆらす 風は短き 稲の花

薫らせた穂を 食むが幸せ

 

…エクストラナンバーその2。突然の加入だったので何も用意してなかったのだけれど、うまいこと書けたので載せることに。

まず “笹” は竹内さん、“花” は後藤花さん、“穂” と “幸せ” で下井谷幸穂さんと3人の名前が入ってるのが一つ。次に “稲の花” は咲いてる時間が短く、これが竹内さんとの活動時期が少ししか被っていないことにかけている。ただ、短くてもその “薫陶” はきっと二人には届くはずだ…の “薫らせた” がそこにあたる。

そして “風” …これは、初めてスマイレージで卒業した小川紗季さんの歌の “わたる風” にかけていて、少しだけ “おはガール” 繋がりになってたりします。ま、これは伝わらなくても良いかな、というレベルなのですが、一応。

夢中で作って来たのだけれど、こういう歴史みたいなのを感じられる “厚み” のようなものを少しでも感じてもらえたら幸いだ。

 

 

D. 『廃郷会華』

 

いやぁ、なんかできましたね(笑)

始めは3、4個の物語にまとまれば良いなぁ、くらいだったのだけれど、結果としてガッツリ全部入れ込みました。

32のところでも書いたのだけれど、24 から始まって 32 で終わると決めたところで『廃郷回花』というタイトルが降って来たんです。で、これで行こう、と。因みに “回” は “季節が巡り来てまた咲く” というイメージで付けていたのだけれど、分かりづらいので “会” に変更。“華” は『花様年華』という映画が好きだから変更(笑)そんなもんです。

さて、こういう二次創作系だとキャラをメンバーに寄せるのが常道なのだけれど、自信がないので却下しました。きもち、相手の女の子は上國料萌衣さんのイメージですが。

 

 

35. ふる雨に 龍を探して なお青く

燃えあがる炎 宿せ瞳に


エクストラナンバーその1。この歌がある場所にリプライズとして 23 の平山遊季の歌が入っていたのだけれど、どうにもしっくりこなかったので追加。

一応、話のなかには組み込んで入るけれど、少しプライベートな要素も入ってたりする…決心的な意味で。

“龍” は『煌々舞踊』のところでも書いた通り竹内朱莉さんのモチーフとしても選んでいる。というよりも、“宿せ瞳に” がまんま “画竜点睛” だったりもする。

そうそう、この歌が書いたときに、一時だけ『テンセイ』に題名を変えようか迷ってたりする。それは “画竜点睛” の “テンセイ” であり、“輪廻転生” の “テンセイ” でもあるのだけれど、迷った挙句に元の『廃郷会華』に戻した。

改めて読み返すとむず痒いけれど、恥はかき捨てである。まあ、こういうファンアートもアリじゃない?ということで。

 

 

E. 全解説を終えて

 

…とにかく長い。

まあでも、書いて良かったなぁ。

スマイレージアンジュルム全員を網羅して書いている人は他に居ないようだし、そういう意味でも特異だったんじゃないかな。

 

意外と考えてるでしょ?(笑)

 

#竹内朱莉アドベントカレンダー にしては竹内朱莉さんに焦点を当てなさすぎだとは思うのですが、他の竹内朱莉ファンの方が素晴らしいものを作っているので、そういうものは自分の役目じゃないと思うし。

賑やかしの一端を担えてたらと思います。

あとは横浜アリーナの公演を見て、何を思うかだな…!