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【でも…いいよ #2】魔曲「でも…いいよ」の好きなところをとにかく語る回

 

 

祝!10万回再生!

 

 

つばきファクトリー『でも…いいよ』Promotion Edit - YouTube

 

 

…もうね、遅いくらいだとは思うんですよ。

いや、当たり前か?

まぁ、世界観が世界観だからなぁ。

 

てかさ。これをアイドルがやってることに関して、悔しさとかないんかなぁ、世のアーティストの方々とかプロデューサーの方々。もう、この完成度でこれやられたら立ち直れないだろ。知らんけど。

いや、賭けではあるのよ。だってテーマが “不倫” だもの、完全に。

たださ、人間って綺麗な面だけじゃないじゃん?どちらかというと、“理性的には絶対にダメだとわかっている何も関わらず、どうしても惹かれてしまう” その心情の中にも人間の本質があると思うんですよ。それ故に、一番 “苛烈” なのではないかと。

 

で、どこまでも “苛烈” なのだけれど、それに反してメロディーラインやアレンジ自体は盛り上がってない…平静を装っているのがこの曲のミソなんですよ。内部にあるマグマのようなドロドロとした感情を決して外には出さず、ただ自分のなかでひたすらに飼い殺しにしているというのがこの曲を “魔曲” にしている血潮としてあると思うんですよ。

主人公にとってその愛情は “ホンモノ” 。いや寧ろ、障害があるからこそ “ホンモノ” と見紛っている説まである。人間、逆境をドラマティックに捉えてしまうもの。それは “現状の正統化” で間違いない。

このどうしようもない “理性的には間違っている” ことと “感性的な面から現状を正統化している” 揺らぎが盛り上がりのないメロディーラインの複雑なリズムのなかで闘っているのだ。

この曲、メンバーがサラッとこなしているように見えるが、やっぱりリズムは複雑だと思う。16ビートを取れてないと正しく音程をハメることが出来ない。

もとい “16ビート” という概念であるが、僕は “16ビートを取る=細かくリズムをとる” というよりかは、“16ビートを取る=一見はリズムから外れたどんな素っ頓狂な位置にある音程もキチンと取る” ことの方が大事なような気がしている。そしてそれは、今回のような外国人作家の作るメロディーラインを歌うときに一番効果を発揮する。もっというと「外国人作家のメロディーライン × 優秀な日本人作詞家」という図式に当てはめたときに一番効果を発揮する、と言った方が良いか。無論、これは元々つんく♂さん一人の中で行われていたことではあるが、その第一線を退いたあとのアップフロントのプロデューサー陣が試行錯誤を繰り返してきた結果として辿り着いた、一つの到達点であると言っても良い。

 

そんなこの曲の見せ所はBメロだと思う。パートで言うと、1番で福田真琳、2番で小野瑞歩が担当している場面である。ここが一番リズムが複雑で、それでいて見せ所でもある。

このBパートにあろうことか西野蒟蒻さんが感覚的な、肉感的な歌詞を乗せているのがなんとも憎いところ。要はこの “肉感的な恋の直感” こそがそもそもの間違いの始まりなのだけれど、それを一番美味しいところに意図的に乗せてるのが本当にこの西野さんの良いところであり、罪な部分である。

そしてこのあまりにも肉感的な、罪作りな部分を超えると清廉なコーラスに彩られるCパートに突入するのだけれど、ここの残酷なまでの美しさがまた良い。ここからサビまで一直線に、決して盛り上がりすぎることなく、それでいて情熱的に曲が進行していくのが堪らないのだ。

歌詞で言えば、このコーラスでは英語が使われているのだけれど、これは「間違いじゃない 泣いたりしない」の時に西野さんが事務所から 「英語を使っても構わない」と言う指示があったところから、今回も引き続き盛り込んだ箇所なんだろうと思う。しかし、この曲のさらに好きなところは英語のコーラスを入れつつも、本メロディーでは “五月雨” “可惜夜” という古典的な言い回し(和語、という言い方で合っているだろうか?)を採用しているところだ。この英語も使えば古典的なことばも使う、この差分にクラクラ来ちゃうのだ。

そしてここら辺の言い回しに主人公の本来の頭の良さや品の良さを見出してしまう。“本来はそんなことをする人間じゃないのに、流されて間違いを犯している人間像” がこういう細かい作詞術から読み取れてしまう…。

 

さて、この “本来はそんなことをする人間じゃないのに、流されて間違いを犯している人間像” を10人で作り出すというのが今回の「でも…いいよ」の魅せどころでもある。

Aメロ…河西秋山が担当するパートはあくまでも外から見た自分。ここはリズムキープに安定感のある人が選ばれた印象。で、問題のBメロ…先ほども書いた福田小野の担当するパートなのだけれど、ここに福田さんを入れたのはある種の賭けだと思う。

正直めちゃくちゃ上手いというわけではないんです。リズムに強い印象もないし。ただなんというかなぁ…やっぱり福田真琳の持つ “聖性” というのかなぁ…肉感的な歌詞を歌わせてもギリ世俗に陥らないのがこのメンバーの凄さだと思うんですよ。

一方で、完全に情念の世界で踊りきっているのが小野瑞歩で、上手いんですよ。たぶん、得意な音域なんじゃないかな。ビブラートの使い方も細かいし、相当練って考えて歌っている感じもするし。反対にいうとこの1番と2番のソロが反対だとここまでのインパクトはなかったのではないかと思うほど。

そして1番サビ…ここのソロを取るのが山岸理子と豫風瑠乃っていう最年長最年少コンビってのが効いてくる。先にいろんな世界を見てきた最年長、そしてまだ知らない世界の多い純真さを持ったままの最年少のコントラスト…これは「アドレナリン・ダメ」でも見られた構図。

 

「アドレナリン・ダメ」の歌割の良さを語る! - さしもしらじな

 

で、やっぱり豫風瑠乃に “だから この嘘よ 永遠に” と1番サビの締めで歌わせるのが正解すぎるんですよ。寧ろ、ここを一番効果的にするためだけにリーダーをここに置いた説まである。なんというか、卒業に関係なく楽曲の完成度を優先して作られているのがここら辺から感じられて本当に良い。

因みに2番はここの二箇所を小野福田が担当しているんですよ…やっぱBメロが肝なのでは?と思う根拠の一つ。

そして、大サビの谷本安美。

音程高いんですよ。それが純真さも感じさせるし、ただ本人の大人な雰囲気も相まって残酷に響いている面もある。

からの小野田紗栞が上手い。前も書いたけど、“ここにいて” 以上にその前の “あと少し” が良すぎる。持ってる全てをつぎ込んでる感じ。さすが小野田プロ。

そして自称ビジュアル担当コンビと言ってるだけあって絵面が強い。

個人的にはこのあとに新沼希空が来るのが好き。“ザ・猫撫で声” って感じがして、どこかに狂気も感じるんですよ。やっぱ雰囲気もどこか浮世離れしてるし。あと、髪色のカラーと髪型も相まってとっても良い…これはただのフェチか。

そして小野田紗栞に帰ってくる。ここのインパクトを作るためには新沼希空しか居ないんですよね…。浮世離れしている新沼希空からのリアルな質感を持つ小野田紗栞へとソロ繋ぎ…うーん、考えられてる。

で、今回はフェイクやコーラスを主に担当している八木栞なんですけど、コーラスで清涼感や清潔感…肉感的な部分から切り離されているのが丁度いい距離なのではないかと。(そういう意味では、豫風瑠乃と同じ役割とも言える。)

 

で、そんな歌割がパフォーマンスにも表れていて。

まず、AメロBメロのソロを担当するメンバーを中心に踊る構成が好きで。しかもそれが結構激しいんですよ。情動的、というか。それでいて雑にならず、細かい仕草までキメにかかる感じが好き。

個人的には福田さんのセルフ顎クイの部分と秋山さんの右肩を内側にグッと入れるところ、小野さんに至っては “素肌の心触れてる” 以降の動き全部が好きだなぁ…そんなに踊れたのか小野瑞歩、恐るべし。

で、あとおそらくなんですけどソロパート受け渡しの時には動きがシンクロするように作られてそうなんですよ。一つ目は河西さんから福田さんへパートが渡るところ。カメラのカット割でわかりにくくなってるけど、たぶんシンクロしてる気がする。

あとは大サビの谷本さんから小野田さんへパートが渡るところ。ここはワンカットで分かりやすくなっているのだけれど、こういう細かい作り込みが隙がなくて好き。

 

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パフォーマンスで言うと、サビで五人五人で別れるて歌うところも好きなんだよなぁ…早くパフォーマンス動画というか、現場に赴きたいなぁ…なんなら池袋サンシャイン広場とかで上から見て楽しみたいんだよなぁ…「間違いじゃない 泣いたりしない」とか上から見たらメチャクチャ面白かったもんなぁ…。

 

そして極め付けはPVの作り込みですよ。

まず、池と森林というシチュエーションの不穏感が凄くいい。清々しいハズなのに、日が強く影が深いのが良い…。あと所々でメンバーを映す時に、中景をワザと略しているのが不穏さを引き立てていい。あえて、中景を省略して、遠景と近景で構成しているのがなんとも良…。そして近景を撮るときは何かしらに手が触れてることもあって…みたいな、なんか一つ一つのツボの押さえ方がカッコいいんですよ。

 

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(こういう一つ一つの構図の完成度がたまらないってのもある)

 

そしてソロの受け渡しのカット割。(おそらくではあるが)河西福田のリレーをハッキリ見せないところ、秋山が歌い終える前に小野さんを映してしまうところ、それでいて谷本小野田の流れはキチンと映すところ。うーん、なんとも練られていて、カッコ良すぎる。

 

ただこのPV、おそらく豫風瑠乃を核において作られているというのがさらに奥深いところ。

今回の豫風瑠乃は “純真さ” の象徴なんですよ。そしてそれに曲全体を通して別れを告げているのか、見放されていくのかが表されていると思うんです。

まずは先ほども書いた “どうか この嘘よ 永遠に” 。ここでキチンと最年長の山岸理子で振っておいて、最年少の豫風瑠乃に渡して意識させておく。

 

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そしてそれを最後の小野田紗栞パート “だから この嘘よ 永遠に” の後にもう一回、豫風瑠乃のカットを入れる。で、ここが憎いのが、小野田紗栞は  “だから この嘘よ 永遠に” で一回伸ばした手を引っ込めてるんです。

 

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そして続く豫風瑠乃のカットではその小野田さんに対して手を伸ばしている。続くラストの小野田紗栞のパートでもう一回手を伸ばさせてて、別れを告げるように振り返りながら手を戻すんですよ…

 

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(まだ実際のパフォーマンスを見てないのでわからないのだけれど、ここ映像用にもう一回手を伸ばしてるのでは?と疑っているところではある)

 

ここの、キチンとジャンプカットを意識している細かい作りが本当に最高…これなんだよ映像で語るってのは…キチンと作り込むっていうのは…さすがレンズをこだわり抜くだけある…映像作品としての完成度が高すぎる…ただのわちゃわちゃPVではない、作品としての完成度…低予算とかそんな次元じゃないんだよ!こういう細かい一つ一つの積み重ねがPVの完成度の高さを決めるんだよ!バーカ!(何に怒っているの?)

 

でね、ここの最後の小野田紗栞の笑顔が本当に最高で罪作りなんですけど…これは次回…20万回再生行った暁にでも書こうかと思います。もうね…あれは天才なのよ。小野田紗栞の “微笑みについて” 。リトキャメ加入以降からね、振り返りながら見ていけたらいいな。ふふふ。乞うご期待。

 

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p.s. 今回残念ながら本文に入れれたかったいくつかの小話もどこかで書こうと思います…たぶん30万回再生記念になりますかね?さて、発売日までに行くかな?

 

(今回の画像は全て「でも…いいよ」Promotion Edit. から)